おもしろいことを追及したいー はじめに、お二人のご経歴を教えてください。ハラクロ:薬科大学を卒業後、企業の品質管理室や都内の大手調剤薬局に勤務したのち、現在は地元である静岡県内の薬局にて薬剤師として務めています。今の職場に入社する際に面接を担当してくれたのが、当時人事担当者だったみやけんでした。 みやけん:私は都内の大学を卒業後、医療系のIT企業や人材紹介会社などに務めました。現在はハラクロと出会った薬局を退職し、今に至ります。ちなみに山崎さん(弊社YNS代表)との出会いは大学時代です。4年生のときに行ったインターン先で、山崎さんが働いていたことから知り合いました。ー お二人が仕事を行ううえで大切にしていることは何ですか?ハラクロ:「おもしろいことをしたい」という気持ちです。それが研究でも、接客業でも、今回の事業でも同じです。その時々で楽しいもの、おもしろそうなものを選択してきた結果、今に至ります。 みやけん:私も同じですね。楽しさの追及が仕事のモチベーションです。ー お二人の性格は似ていますか?みやけん:性格は全く似ていないですね。ハラクロは理論派、私は行動派です。 ハラクロ:そこが魅力でもあります。似たような人間が集まってもおもしろくはないですから。違うことができる二人だから楽しいです。 医薬品の正しい知識を広めたいー ここからは薬選について伺います。まずはサービスの特徴をお聞かせください。ハラクロ:薬選は、市販医薬品選びをサポートする情報サイトです。最大8つの質問に答えるだけで、症状やお悩みに合った市販医薬品がどれなのか、どのサイトで購入できるのかが分かるようになっています。2022年4月より先行公開中ですがまだまだ制作段階にあり、より便利にご利用いただける機能を追加開発中です。ー 本サービスを検討されたきっかけは何ですか?ハラクロ:構想は2014年から頭にありました。きっかけは当時の薬機法(※)改定です。それまで店頭でしか売買できなかった医薬品が、インターネットでも売買できるようになりました。自分が薬剤師として日々行っている接客を情報サービスとして実現できれば、医薬品やその使用に関する正しい知識の普及に役立つのではないかと考えました。しかし当時は資金も人脈も無かったため、構想で終わっていました。※薬機法「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称ハラクロ:7年後、環境や心境の変化があり、寝かしていた構造を実現したいと考えるに至りました。ある程度の資金も貯まりましたし、みやけんを通してYNSさんを知っていたので、相談できる人脈もありました。その時調べた限りでも、同じようなサービスが世の中に無いことも分かり、着手に踏み切るすべての条件が揃いました。2021年6月のことです。 みやけん:社会状況の変化も、追い風となりました。薬機法が改正されたばかりのころは、インターネットで売買できるのは一部の医薬品に限られていました。しかし7年が経過する中で規制が緩和され、より多くの医薬品が対象になっていました。その一環で、これまで処方箋が無いともらえなかった薬がどんどん市販薬になって、ドラッグストアでも売買できるようになっていました。ロキソニンや、花粉症の薬が有名な事例ですね。 ハラクロ:しかも、ドラックストアや薬局で皆さんが買っているロキソニンは、実はインターネットでも購入できるのです。こういった情報はまだまだ広く知られていませんし、政府としても、医療費削減の観点から「自分たちの健康は自分たちで手当てしましょう」という趣旨のセルフメディケーションを推進しているにも関わらず、そのような情報サイトが世にない状況でした。YNSへの相談で不安が安心に変わっていったー サービスの実現に向けて着手されはじめた中で、感じていたお悩みはありましたか?ハラクロ:2つの課題がありました。一つは、市販薬選びをサポートするナビゲーションの設計図、いわゆるアルゴリズムづくりです。サイトの中でお客様がこう答えたら次はこの選択肢を表示し、これを選んだら次はこの選択肢を表示し、最終的にこの医薬品をご案内する、というマップに似たものを作成する必要があり、完成までに5か月を要しました。 みやけん:資料としてはパワーポイントで120ページを超えるものになりました。体の部位ごと、症状ごとにアルゴリズムがあって、候補にあがった医薬品を最終的にどのように絞って表示させるかという、一連の流れが全て書いてある資料です。髪の毛、目、鼻と、頭のてっぺんからつま先まで途方もない工程で、ハラクロは鼻血を出しながら完成させていましたね。 ハラクロ:あの時はみやけんに心配されましたね。薬剤師としての本業をしながらの作業だったので必死でした。ハラクロ:ここまでが第一の課題です。いよいよマップが完成したときに、これをWEBサービスとして成立させられるのか?このアルゴリズムがシステム開発エンジニアに伝わるのか?というのが2つ目の課題でした。 みやけん:データベースを用意して、アルゴリズムによって抽出していくことはなんとなく理解していたのですが、本当にシステムになるかどうかの確信が持てませんでした。一方で「山崎さんがつくれないなら、日本のどこでもつくれない」という思いもありました。 ハラクロ:みやけんは当時「山崎さんなら大丈夫、なんでもつくれるから」と話していましたね。 みやけん:私自身は医療系の人間なので、アルゴリズムを完璧に理解できなくても70、80%程度の理解はできました。一方、貴社はシステムのプロですが薬のプロではありません。そのため本当に理解いただけるかが少し不安でしたが、打合せが始まってからはすぐに消え去りました。 ハラクロ:山崎さんはとても論理的な方です。私が質問すると完全な回答を返してくださいますし、山崎さんからの質問に対して私が答えると、理論を完璧に理解してくださいます。「この方なら我々の構想を確実に実現してくれる」という確信に変わってきました。心血を注いだ「情報の正確性」ー サービス提供にあたって、こだわった部分を教えてください。ハラクロ:これも2つあります。まずは医薬品のサイトなので、「正確な医薬品の情報を伝える」こと。これは絶対でした。 みやけん:医療人であるハラクロは、情報の正確性に心血を注いでいます。薬というのは間違いがあってはならないもので、ほんのわずかなミスにより最悪死に至るケースが想定されるからです。その点ハラクロは、さまざまなリスクを考慮したうえでアルゴリズムを作成しています。ただ情報を紹介するのではなくて、場合によっては医療機関を受診することを推奨するなどしています。 ハラクロ:薬を売るためのサイトではなく、あくまで正確な情報を普及したいという思いが根底にあるので、正確性にはこだわりました。 実のところ、アルゴリズム作成自体はそんなに大変なことではありません。薬剤師として接客する際のトークの内容や順序は、理論的に決まっているからです。お客様からどういう返答があればどの医薬品をご案内するのかはほとんどの薬剤師で一致していますし、そういった書籍もあります。私がアルゴリズムづくりのために行ったことは、自分の頭にあるマップを言語化することと、そのマップが最適なのか、複数の書籍とすり合わせることでした。私のマップと本がずれていた場合は根拠となる論文を確認し、アルゴリズムの精度を高めていきました。ー こだわったことの2つ目はどのような点ですか?ハラクロ:2つ目は「いい意味でふざけよう」ということです。ただただ真面目なサイトをつくるのではなくて、正確な医薬品情報を提供しながら、どこかふざけている。そういったギャップがあればおもしろいと考えたからです。それを表現するために、あちこちに仕掛けを入れていきました。一つがキャラクターです。 ー お二人が楽しさやおもしろさを大切にしているからこその仕掛けですね。キャラクターに猫を選んだ理由は何ですか?ハラクロ:私が猫好きだからです。ただそれだけです。 薬選だけで完璧なセルフメディケーションができるようにー 今後はどのような機能が追加される予定ですか?ハラクロ:まもなく公開予定なのが、病院でもらっている薬と同じ成分の市販薬がインターネットで購入できるかを調べられる機能です。 みやけん:コロナ禍で病院に行きづらいという声をよく聞きます。そういった方の助けになれればと開発しました。 ハラクロ:例えばカロナール。病院に行かないともらえないイメージがありますが、実は市販されています。同じ成分ですが違う名前で販売されているので分かりづらいのですが、10種類ほど売られています。カロナールが欲しいけど病院に行けない、そんなときに薬選で調べていただけたら、市販薬でもこんなに手に入りやすいんだということを知っていただけるようになります。ー 仕事や育児などで病院に行く時間がない方に便利な機能です。ハラクロ:この機能の副産物として、市販薬名を入力すると、同じ有効成分が含まれた別の市販薬を検索することができます。例えばカロナールの市販薬の一つが「タイレノールA」ですが、薬選で調べていただくと、タイレノールAと同じ成分の別の市販薬を見つけることができます。薬局で売り切れていたからって、あきらめる必要はないんです。 みやけん:近日中にできあがるので、楽しみにしていただければと思います。 ハラクロ:将来的には、薬選にログインするだけで完璧なセルフメディケーションができるようにしていきます。薬選は開発途上のサイトで、まだまだつくりたい機能があるので、YNSさんには完成形までぜひお願いしたいです。 みやけん:山崎さん以外の貴社の皆さんも、対応のはやさや理解度の高さにとても満足していますし、感謝しきれません。引き続きよろしくお願いします。 本日ご紹介した「薬選」サイトはこちら!薬選公式HP※インタビューの中でご紹介した、「病院でもらった薬と同じ成分の市販薬を探せる機能」が公開されました!