契約形態は大きく2つシステム導入を検討されている方や、新しいアプリ開発の担当になった方の中には、「システム開発の契約形態ってどんなのがあるの?」「どれが自社に合っているの?」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。システム開発における契約は、「請負契約」と「準委任契約」に大別されます。本記事ではそれぞれの特徴やおすすめパターンをご紹介します。請負契約とはキーワードは「成果物」と「契約不適合責任」請負契約とは、顧客が特定の仕事を外部へ委託し、請け負った者が「成果物」を納品することで報酬が発生する契約形態です。成果物とはプロジェクト完了後の最終納品物を指します。システム開発の場合、成果物は「システム本体」になることが多いのですが、委託内容によっては設計書や報告書、ユーザーマニュアルなどが該当します。何をもって成果物とするかは、事前に両社の合意がなされます。請負契約ではこの成果物がカギとなります。開発会社は請け負った成果物を完成させる責任を負います。何らかの理由で完成しなかった場合や、契約で定められた品質基準に達していない場合は「契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)」が発生し、顧客から損害賠償請求を受ける可能性があります。請負契約では、プロジェクト完遂に必要な作業の範囲や作業ボリューム、価格が契約前に合意されるため、顧客である発注者は全体のコストを事前に把握することができます。一方、プロジェクトの途中で仕様変更が発生した場合は、都度再見積りによる追加費用が発生します。ウォーターフォール型開発(受託開発)と相性よしウォーターフォール型開発とは、システム開発の各工程を順を追って進行する開発手法です。前の工程を完了させてから次の工程に進むため、後戻りが基本的にありません。このような進行方法が、上から下へと一方向へのみ流れる滝と同じであることから、ウォーターフォール(滝)型と名付けられました。上記図の通り、はじめに「要件定義」と呼ばれる工程でシステム化の範囲や必要な機能などを詳細に定義します。その後、設計・開発プロセスへと進みます。はじめにシステムの仕様が定まり、スケジュールやコストの管理が把握しやすいという特徴が、請負契約の特徴と合致しているため、請負契約ではウォーターフォール型の受託開発が適用されることが多くあります。準委任契約キーワードは「作業量」と「柔軟性」準委任契約とは、顧客が特定の作業を外部へ委託し、受託者が遂行することで報酬が発生する契約形態です。請負契約と異なり、成果物などの概念はありません。ただし受託者は顧客との間で合意された条件(作業範囲、作業時間、作業品質など)に基づき、委託された作業を適切に遂行する責任を負います。請負契約ではリスクのあった「開発途中の仕様変更」も、準委任契約では柔軟に対応できます。最初にシステムの仕様を定める必要がなく、支払いも実際の作業量に基づいて行われるためです。また必要に応じて人数を増やし開発スピードを上げるなど、柔軟な人員調整が可能です。一方、プロジェクト全体の予算管理が難しい側面もあります。アジャイル開発(SES/ラボ型開発)と相性よしアジャイル開発とは、企画から設計、開発、そしてリリースまでの工程を短いスパンで反復する開発手法です。従来型のウォーターフォールモデルとは異なり、一度にすべての要件を定義しません。一つの機能や一つの画面など、小さな単位での開発を繰り返します。リリースごとに顧客からのフィードバックを得ながら改善を重ねていきます。このように仕様の変化に強いアジャイル開発は、同じく柔軟性のある準委任契約と相性が良く、SES(システムエンジニアリングサービス:客先常駐型のエンジニア貸し出しサービス)やラボ型開発(リモートでの開発チームレンタルサービス)の多くで採用されています。おすすめパターンここからは、それぞれの契約形態をおすすめするパターンをご紹介します。下記の図は、弊社サービスを契約形態別に比較したものです。▼請負契約をおすすめするパターン・作りたいものが明確な場合・大人数での開発体制が必要な場合開発規模が大きく大人数での開発体制が必要な場合は、請負契約での受託開発がおすすめです。開発会社による適切なマネジメントのもと、徹底した品質管理・責任をもった成果物の納品が行われます。▼準委任契約をおすすめするパターン・作りたいものが定まっていない場合・新規事業立ち上げによる開発の場合新しいサービスを立ち上げる中、「事業が上手くいくか分からない中でいきなり仕様を決めるのは不安…」という方は、準委任契約がおすすめです。月額制で小規模な開発を繰り返し、柔軟に仕様を変更しながら進めることができます。段階的契約の選択肢併せてご紹介したいのが、段階的契約(多段階契約)です。段階的契約とは、プロジェクトの全工程を一括で契約するのではなく、工程ごとに個別の契約を結ぶ手法です。1つのシステムを1つの契約でまとめる必要はありません。例えば、・要件定義は準委任契約で行い、設計フェーズ以降は請負契約に移行する・システムの初期構築は請負契約で行い、追加開発や継続的な機能改善は準委任契約に移行するなど、システムの内容や自社の要望に応じて、都度適切な契約形態を選択することも可能です。また、同じ請負契約でも要件定義&設計フェーズとそれ以降に分けて契約を結ぶ方法もあります。この場合、要件定義や設計を行う過程で自社の要望がさらに明確になり、システムに必要な機能を正確に把握できます。結果、過不足ない開発作業が効率的に行われ、費用の膨れを最小限に抑えることができます。まとめ本日はシステム開発に請負契約と準委任契約の特徴や、それぞれの形態をおすすめするケースをご紹介しました。今後の参考になれば幸いです。システム開発の見積や契約については、こちらの記事も参考になさってください。・システム開発の見積もりの内訳は?費目の見方や算出方法ご紹介・【比較チャートあり】失敗しないシステム開発会社の選定ポイント弊社YNSでは多段階契約を含め、システムの規模やお客様のご要望に応じて最適なご契約・お見積方法をご提案しています。また、請負契約でのシステム受託開発も、準委任契約によるオーダーメイド開発チームのレンタルも行っております。「こんなことできる?」「とりあえず自社の状況を相談したい」など、小さなことでもお気軽にご相談ください。提供サービス一覧はこちらまた弊社では、お客様が既に取引のあるシステム開発会社様から提案された見積もりの妥当性が分からない、などのご相談も承っております。「開発会社の選定についてセカンドオピニオンが聞きたい」「進行中のプロジェクト。外注先との打ち合わせをもっと円滑に進めたい」なども、お気軽にご相談ください。